7月
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文化とは如何に動くのだろうか
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先週日曜は、ラッパーZEEBRA著になる『ZEEBRA自伝〜Hip Hop Love』を手に、初夏の貴船山に行ってきた。叡電ずっと乗って行くとなにがあるのか、前から気になっていたのだ。ご存知かもしれないが、叡電は宝ケ池で分岐した当りからぐっと素朴さを増す。今回初めて精華大学前駅を通り過ぎてその先に向かったわけだが、それから考えるとうちの大学あたりはまだ新興住宅地っぽく都会的であることが判明した。北山は奥深く、空気もずいぶん涼しい。時節柄天気は快晴というわけにはいかなかったが、むしろ時々日が射すぐらいの方が、この時期の山歩きにはちょうど良い。
出町柳から鞍馬に向かう叡電はゆっくりしたもので、『ZEEBRA自伝』は行きの電車だけでずいぶん進んだ。2008年11月28日発行。「ジブラ著」とあるが、奥付には「取材・構成 長谷川誠」とあるのが逆に良心的。なぜこの本なのかというと、最近ヒップホップ関係の研究書が相次いで刊行されたんで、日本ポピュラー音楽学会の学会誌に日本語で読めるヒップホップに関する研究書について、俯瞰的に書評をまとめるよう頼まれているため。まあ、所謂タレント本の一種なので、この内容をそのまま引き受けるわけにはいかないが、日本のヒップホップアーティストの生い立ちについて、なんとなく抱いていたいくつかの疑問にぼちぼち糸口が見えた感じである。ぼくは東京でヒップホップのフィールドワークをしているときに、渋谷の私立校の高校生を間違いなくエスカレーター進学させるためのダメな学習塾でダメな英語の授業をしていたが、そのとき教えていた青学の生徒たちが、まさにこの本に出てくるようなタイプだったのよね。
この日は精華大前から更に2つ先の二ノ瀬駅で下車し、夜泣き峠まで急登して貴船山に向かうというルート。久々の登山とあって、膝がキツかったー。ちなみに貴船山から川床のある所謂貴船に向かう整備された登山道は無いようだ。それに貴船山には3つくらい頂上がある。それ全部踏破しようと思ったけど、迷子になって最後のひとつは断念した。どうでもいいことなんだが。
で、その3つある頂上のうちのひとつでお昼。お昼と言っても当然しおらしく自分でお弁当とか作るわけないし。来しなに出町柳の駅ヨコにあるおにぎり専門店で買っといたもんをほうばる。黒ウーロン茶飲みながら読書。年代的にぼくもZeebraもヒップホップとの出会いはほぼ同じ。マイケル・ジャクソンであり、ハービー・ハンコックであり。同時にMSGとかも聴いていたらしい。まあ、どう考えても超越的にブラック音楽だけを聴いていた、というのは、その当時ほぼありえないのだが。
ぼくと違うのは、例えばターンテーブルが1万円で売ってたら、ためらわず買えているところや、親の主催するパーティーにカマヤツヒロシなんかが普通に出入りしてたらしいとこ。幼稚園から慶応で、小学校のときからハワイやらニューヨークやらに行ってたわけだから、ドロップアウトしたとはいえ、文化資本的にはやっぱりエリートなんだよな。結局日本に新しい音楽を持って来れる人たちって、こういう感じなんだろうね。日本にジャズを持ってきたひとの多くは藝大出の音楽家だし、はっぴいえんどなんて(以下略)。
でも、チーマーやギャルみたいな「渋谷」の若者逸脱文化の求心力って、慶応・青学の中高生が引っぱっていったことで、それまでのお嬢様・お坊ちゃま的なもんとくっついていったじゃないかな。文化的には反学校的なんだけど、スタイル的なアイテムは高級品みたいな。ぼくが教えてた学習塾でも、むちゃくちゃ落ちこぼれなんだけど時計はロレックス、とかいたしな(かなりオールドスクールなお話ですが・笑)。
貴船山は、貴船神社の西に位置するのだが、貴船神社から貴船山に直接アクセスすることは出来ない(いや、やろうと思えば出来るのだが、整備されたルートがないのである)。なので、貴船山の山頂からまた少し下って、そのまま尾根伝いに1時間ちょい北上して滝谷峠というところまで行ってから、沢沿いを降りてこないといけない。ここが結構キツかった。それほどでもないが、最初のうちは下りの角度が急な上、ほとんど沢のなかを歩くような格好になっており(雨が多かったせいもあるのだろうが)、何度も滑りそうになった。所々ロープが用意してあるセクションもあり、低い山なのに結構テクニカルなのである。
Zeebraのすごいところは、やっぱりそういう環境に生まれながら、それをちゃんと相対化して、自分のクリエイティビティの糧にしているところじゃないか。子どもが生まれて、父親としての自覚からサラリーマンをやってみたり、それがうまく行かなくても、離婚後もちゃんと子どもを引き取って育てていたり(おれより4コ下で、子ども4人育ててるってだけでもリスペクトもんだよ)。
しばらくすると、車道が見えてきて、それに下りてそのまま下ってゆくと貴船神社の奥社にたどり着く。山登りしていつもビミョーなのはこの、誰もいない山のなかの世界から観光客の蠢く下界に降り立つときの気まずさというか、居心地の悪さなのだが、これがロマンティシズムと言うものなのだろう。
あと参考になったのは、日本語でのフリースタイルの練習の仕方が書いてある件。やり方は他にもあるのだろうし、自分らが一番最初にやった、とかいうのはB-boy特有の吹かしだとしても、彼らがやっているスキルの付け方から、僕ら教員が学ぶべきことは多いのだよ。ポピュラー音楽の学び方って、そういうもんなはずなんだけど、なかなか学校的な場所での音楽教育には取り入れられていないよなぁ、と。
貴船神社についてからは車道沿いに叡電の貴船口まで歩き、観光客で込み合う叡電に乗って帰宅した。
ゼブラ 2008年 『ZEEBRA自伝〜Hip Hop Love』 ぴあ
このネタでは最初の記事ですね.
縦位置の写真が縦にならないのは原因不明です。近く改善いたします。すんません。