7月

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By djmagimix

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Categories: 文化表現基礎演習III

文化表現基礎演習III(第14週)

ポピュラー 音楽研究
文化表現学科Aコース・基礎演習III 2009年7月9日

当日配布したレジュメはこちら

ポピュラー音楽研究の方法(第二回)

先週:これまでしてきたこと
今週:ポピュラー音楽を研究する方法

今日の内容

  • 文化のグローバリゼーション
    • グローバルvsローカル
    • 「脱埋め込み」と「再埋め込み」
  • 音楽生産の《場》と媒介
    • 内的読解と外的読解の乗り越え
    • 《場》の構造と音楽産業
  • 博論の調査結果概要

文化のグローバリゼーション

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80年代初期のヒップホップ映像:チャールズ・アーヘン監督(1982年)『ワイルドスタイル』より

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日本語ラップの例:Zeebra(2008年)『Jackin’ 4 beats』ポニー・キャニオン

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フランス語ラップの例:Suprême NTM(1995年)『Qu’est-ce qu’on attend?』ソニー・ミュージック

ニューヨークの貧民街で生まれたヒップホップが日本やフランス(やドイツや韓国や南アフリカ)にも根付いていくとき、なにがおこっているのか?
「ヒップホップ」と名付けられた(分類された)実践が、その発祥の地から切り離され、別の場所に接ぎ木された

グローバルvsローカル

二つの見方

  • 反グローバル:アメリカの文化が世界中に溢れ、それ以外の場所の独創的な文化を駆逐している。
    • フランスのラップグループを日本のレコード会社が発売していることの説明にはならない
      • そもそも、アメリカ文化の氾濫によって駆逐された「独創的なローカル文化」自体、後から美化されたものなのではないか?
  • 親グローバル:ローカル文化は、アメリカ文化を流用して独自の文化を生み出している。
    • ローカル文化は、時に切り刻まれてサンプリングされ、西洋の音楽家により利用されてもいる
      • ワールドミュージックとか
      • 癒しとか→結局オリエンタリズム

西洋からのまなざしにより《癒し》にされてしまったローカル音楽の例

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Deep Forest(1992年)『Sweet Lullaby』ソニー・インターナショナル

「脱埋め込み」と「再埋め込み」

アンソニー・ギデンズ(1993年)『近代とはいかなる時代か』而立書房

近代とは、本質的にグローバル化するものである。

  • 時間や場所から切り離された特定の社会関係により、僕らの生活の本物らしさは幻影的に保証されている
    • これを保証しているのが、近代制度であり、近代制度は、特定の文脈から切り離された、自律したものとして存在する
      • 僕らは普段何気なく生活しているけれど、3日間水道が止まったり電気が止まったり携帯がつながらないだけで、《自分の本来の生活》を失ってしまう。
      • 水道や電気や携帯の仕組みはあまりに複雑で、一度止まってしまうと専門家がこない限り《本来の生活》を取り戻すことは出来ない。
        • つまり、我々の生活は、つまり僕らの僕ららしさは、深い部分で僕らには手の終えない複雑な仕組みによって支えられている。

グローバル化は同時進行的にローカル化を前提とする。

  • 時間や場所の制約から切り離された(これを「脱埋め込み」という)近代制度は、特定の時間や場所にローカル化される(これを「再埋め込み」という)ことによってのみ機能し、ローカルな文脈は、時にはこうした近代制度の導入を妨害することもある。
    • つまり、グローバル化に対する賛否というローカルな価値判断そのものも、グローバル化の産物なのである
  • 近代制度の「脱埋め込み」を可能にするのは:
    • 《象徴的通標》=それを手にする個人や集団の特性にかかわりなく「流通」できる、相互交換の媒体をいう。(例えば貨幣)
    • 《専門家システム》=われわれが今日暮らしている物質的、社会的環境の広大な領域を体系づける、科学技術上の成果や職業上の専門家知識の体系のことをいう。(例えば弁護士、建築家、医師)

音楽を可能にしている近代制度とは?

  • 《象徴的通標》=レコード・CD・MP3
    • エジソンの蓄音機(1877年)
      • 日本では1878年に公開
        • 西洋人の発明した機械が日本語をしゃべるので人びとは驚愕した
      • フランスでも1878年に公開
        • 科学アカデミー会員はこれを腹話術による茶番と勘違いして憤慨した
    • 1920年代までには日仏で急速に普及
    • 現在ではほぼ世界的に交換可能になっている

音楽を可能にしている近代制度とは?

  • 《専門家システム》=著作権制度
    • 最初の著作権法(1710年英国で成立)
      • 国際的な権利保護は1886年、フランスが中心となり成立(ベルン条約)
        • ベルギーの出版社がフランスの文豪の名作を海賊出版していたため
    • 日本の著作権法は1899年に成立
      • 開国にあたって結んだ不平等条約を撤廃するための条件として強要されたもので、作者からの要求によるものではなかった

音楽生産の《場》と媒介

内的読解と外的読解の乗り越え

  • 内的読解:書かれたテクストそのものに、なにか時代を超えた普遍的な意味や価値が存在する
  • 外的読解:作品は、それが書かれた社会状況を「反映」している

作品の内的読解と外的読解

  • 時代を超えた普遍的な価値が「作品」の内側にあるとして、そうした普遍的な価値をもつ「作品」が西洋に集中して存在するのはなぜか?
    • そもそもではなぜ同じ「作品」を好きな人と嫌いな人がいるのか?
  • 「作品」の価値がそれが書かれた社会状況を反映しているとして、その作品が時代を超えて後世に受け継がれるときその作品の意味は、それが書かれた時代を知らないと理解し得ないのか?
    • 単純に昔書かれた作品の言葉遣いや楽曲構成が美しいと感じることは間違いなのか?

《場》という考え方

  • 「作品」やその「作者」は、単独で存在するのではなく、他の「作品」や「作者」との関係により存在し、それぞれが、芸術的価値の高さを巡って競い合っている。
    • 故にそれぞれの作品の中身は特定の価値基準に沿って洗練される。
  • その特定の価値基準が通用する(全員がその中でトップになるためにしのぎを削る)範囲を《場》と呼ぶ。
  • 複数の「作品」がせめぎあう《場》において、芸術的価値の高さは、経済的な足枷から自由であればあるほど認められる傾向がある。
    • 《場》は、それが成立している時々の社会的、経済的、政治的状況をある程度反映する。
      • ただし、商業的な制約から自由であればあるほど、その「作品」は芸術として価値があると看做される。
        • そのため、外的状況が直接作品に反映されるとは限らない
          • →「普遍的な美」
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《場》の構造と音楽産業

特定の時代の、特定の社会における、ポピュラー音楽の《場》の構造を分析することで、内的読解や外的読解を乗り越えることが出来る。
《場》における作品や作者のせめぎ合いは、それを伝えるメディア(テレビか、ネットか、フライヤーか)や演奏場所(市民ホールか、クラブか、路上か)や聞き手の美意識(みんなが聴いているから良いのか、誰も聴いていないから良いのか)などのせめぎ合いと、共犯関係にある。

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味方と敵を区別し、その間に線を引く

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DJ Cam(1996年)『Friends and Enemies』インフラマブル

博論の調査結果概要

ヒップホップのグローバル化を理解するには:

  1. ヒップホップがニューヨークの貧民街という文脈からどう切り離された(「脱埋め込み」化された)のかを調べる
  2. それが東京、パリのローカルな文脈に、どのようなプロセスを経て「再埋め込み」化されたのかを跡づける

ヒップホップはニューヨークの貧民街という文脈からどう切り離された(「脱埋め込み」化された)のか?

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映画『ワイルドスタイル』から

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シュガーヒルギャング(1979年)『Rapper’s Delight』シュガーヒル

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グランドマスター・フラッシュ&フュリアスファイヴ(1982年)『ザ・メッセージ』

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Run D.M.C.(1986年)『ウォーク・ジス・ウェイ』

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N.W.A.(1988年)『Straight Outta Compton』

  • ヒップホップの4分野(グラフィティ、ブレイクダンス、DJ、ラップ)のうち、特にラップが、元々の近隣コミュニテーの若者のパーティーという文脈から切り離された。
    • ラップの内容も、その場をもり立てるための言葉遊びから、曲単位で完結する物語性を持ったものに変わった。
    • 踊るための曲から、聴くための曲に変わった。
  • ヒップホップは録音・再生技術、著作権制度、音楽産業、メディア産業などの近代的制度を媒介として脱埋め込み化され、世界に流通していった

それが東京、パリのローカルな文脈に、どのようなプロセスを経て「再埋め込み」化されたのかを跡づける

パリや東京で「本物」のヒップホップと「偽物」のヒップホップを区別する指標を、現場のアーティストやレコード会社関係者、ラジオ局編成担当、雑誌ライター、編集者、クラブ経営者、レコード店バイヤーなどがどう理解し、実践しているかをインタビュー調査で明らかにする

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大手レコード会社A&R

  • 「日本人はメロディアスな歌ものが好き。ラップは受入れられない」
  • 「ラップは流行もの」
  • 「ランDMCとか、アディダスのスニーカーを履いて、金のネックレスしてとか、ファッションばかりに注目が集まって、中身をちゃんと紹介しなかった。だからラップはそういうもんとして定着してしまった」

ヒップホップ専門レコード会社A&R

  • 「普通の店や雑誌が取り上げてくれない」
  • 「日本のレコード産業の仕組みは小回りが利かない」
  • 「通常の流通ルートには乗りにくい」
  • 「クラブやレコ屋を廻って商品をおいてもらったりフライヤーを配ったりする「ストリートに根ざした」営業が一番大事」

テレビ局

  • ほぼ完全に無視

FMラジオ局編成

  • 「日本語ラップを流して、局のクオリティを下げたくない」

大手レコード店ヒップホップ担当バイヤー

  • 「スチャダラパーなんかはJ-pop扱いだが、Zeebraやライムスターは洋楽と一緒に並べている」

渋谷の専門店

  • 「昔客だった子がレコードリリースしたりして、置いてくれと頼んでくるようになった。ストリートを支えているのは自分たちだから、きちんと選んで、良いものを扱う」
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まとめ

ポピュラー音楽研究

  • 《場》の構造を研究する
    • 通時的研究軸(歴史を掘り起こす)
    • 共時的研究軸(同時代に別の場所でなにがおこっていたかを調べる)
  • 統計的調査
  • フィールドワーク(エスノグラフィー)

おまけ

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