7月
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文化とは如何に動くのだろうか
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リバプール大学のキャンパスから5分ほど歩いたところにある学生寮に移った。学会開催期間中はここが宿となる。レスター大学に留学中、ぼくは友達と共同で家を借りていたけれど、クラスメイトのなかにはこの手の学生寮に住む人も多かったので、なんとなく勝手はわかる。どこに行ってもほぼ同じような作りなのである(ロンドンは別)。学会は明日からなので、今日は気ままに街を散歩してみた。
リバプールというと、なにを思い浮かべるだろうか。もちろんビートルズ。しかし、それと同じ位重要なのは、この街が造船を中心としたイングランドでも有数の工業地帯であったこと(あの「タイタニック」もリバプールで建造され、リバプールから出航した。だから、あの船にはアイルランド人が多く乗っていたのだ。リバプールはアイルランドへの玄関口でもある)、そして、アメリカ大陸と西アフリカと欧州を結ぶ三角貿易の中心地であり、奴隷貿易によって発展した街であるということだ。三角貿易というのは、欧州から繊維や武器を西アフリカに運び、それと黒人を交換し、交換した黒人をカリブ海や南米に運び、砂糖プランテーションで奴隷として働かせ、出来た砂糖を今度は欧州に運ぶという交易システムのことである。
しかし、第二次世界大戦時にはナチスドイツの攻撃を受け、1950年以降は造船業も斜陽化し、マージービートやビートルズの時代には、じつは街全体が不況に喘いでいたのである。この頃から産業空洞化が進み、同時に港湾地区の再開発やスラム街の浄化が行われたと言う。ビートルズ関連の場所や建物などを使った観光開発が、現在のリバプールの姿である。今回のIASPM国際学会を主催するリバプール大学ポピュラー音楽研究所(IPM)には、こうした観光開発などで上手にリバプール市と力を合わせてきた研究機関としての側面も持つ。
というわけで、先ずは国際奴隷制度博物館に行ってみた。これは、リバプール国立博物館にあった汎大西洋奴隷ギャラリーというものを前身として2007年に開設された博物館で、リバプール港のアルバート・ドックの一画にある。リバプール海事博物館の一番上が、国際奴隷制度博物館というかたち。期待したほど規模は大きくなかったが、欧州人がアフリカに入植したときの様子や、それ以前のアフリカの姿、そして奴隷たちの悲惨な生活・労働環境について、写真や絵、そしてその当時使われていた道具などを通して説明している。さすがイギリスだけあって入場は無料。イギリスの博物館・美術館は入場無料の割に展示や解説がしょぼいというのが定説だが、なかなか力の入った内容でした。今は特別にリバプールの黒人コミュニティについての展示が行われていた。
一番目に焼き付いたのは、会場中央に用意された暗い部屋で、中に入ると、奴隷輸送船で大西洋を渡る黒人奴隷たちの映像が360度ランダムにずっと投影されているというもの。船倉に寝そべらされ、手足を鎖で繋がれたままアメリカに向かう奴隷たちはどれくらいの精神的・肉体的苦痛を受けたのか計り知れない。白人も普通に来場していたけれど、ほとんどが間違って入ってしまったような顔をして、頭を垂れて巡回していた。誰にとっても辛い過去。別の部屋では、南米のジャングルを思わせるデコレーションのなか、奴隷貿易の生存者の映像が流れている小部屋があったのだが、ここでは黒人の家族連れが映像に見入っていた。
残念ながら、この博物館の所蔵カタログのようなものはなかったが、ブックレットのようなものがあったので買ってきた。国際奴隷制度博物館のロゴの入ったマグカップと一緒に。全ては商品である(と、シニカルになってみる)。
奴隷博物館のあとは、普通にビートルズの歩みをよくまとめてあるので有名なザ・ビートルズ・ストーリーに行った。ここは10年くらい前に中身を見たことがあるので(しかも民間なので有料)、中には入らず、ミュージアムショップでマグカップを買った。奴隷博物館でマグカップを買ったので、ビートルズのも買っとけば好対照になるかな、なんて思ったのね。研究室に両方置いといたら教育効果高いかな、なんてね。
で、ついでなので、カバーンクラブとかがある一帯にも一応行ってみました。ここも以前来たことがあるので、別になんてことないんですが、今回はこれがどんな場所なのかをわかりやすく説明する目的で、録音機を回したまま歩いて来ました。現在のリバプールサウンドって、こんな塩梅です。
さて、明日から学会です。午前中の基調講演はフランコ・ファブリ他。生ファブリは初めてかも。アジアの音、ヒップホップ、メディアというワークショップが同じ時間にあるみたいで、どうしようか悩んでます。トインビーはブリティッシュジャズで発表するみたいだが、ニーガスは今回はどこにも名前が出てません。なんか引っ越しするとか言ってたし、来るのかな……。
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