7月

15

By djmagimix

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Categories: IASPM09

IASPM09 at Liverpool(二日目)

今日は朝九時からのセッションがあったのだが、いろいろ準備しているうちに時間がなくなりこれはパス。かろうじて、独裁政権下のチリで政治的な内容の歌をのせた海賊カセットがどのような役割を果たしたのかについての発表を聴いた。その時点で、早くくれば良かったと後悔。特に、カセットテープは秩序破壊的な内容を持っているとしても外見が変わることがないとということを、この技術の持つ不透明性(opacity)という言葉で説明していたのが印象に残った。質疑応答では、英語でのやり取りから急にスペイン語での応答になだれ込むという(一応通訳役がついていた)国際大会ならではの一幕も。インターネットにもこういう役割は期待されているんだろうけれど、流通経路(回線)がたいていの場合国家あるいは大手企業の所有物であり、だんだん恒常的な監視下に置かれるようになっていることから考えると、どうなんだろうか。

11時からの基調講演は、まずデヴィッド・ブラケットがアメリカの20年代、30年代のレコードカタログの通史的比較を通し、「ポピュラー」、「レイス音楽」、「ヒルビリー」という音楽カテゴリーがどのように生まれ、定着していったのかを跡づける研究の発表があった。わりと既視感のある発表だった。出物は次のマリア・ハナチェック(だと思う。本来の綴りはMaria Hanáček)。ベルリンのフンボルト大学所属。タイトルはスキゾフォニアとロックイデオロギー。「スキゾフォニア」という言葉は、マリー・シェーファーらが言い出したもんで、音源から切り離された音のあり方、というような意味らしい。エアロスミスとメタリカという非常にわかりやすい素材を使って、録音・再生技術がいかにポピュラー音楽の作者至上イデオロギーを変えていないかを論証した。エアロスミスはスタジオでの多重録音について、録音中の風景をうつしたDVDのなかで、「こうすることでメンバー一人一人の演奏が際立って聴こえるようになり、より本物の俺たちを表現することが出来る」てなことを言っているんだけど、DAWによるカット&ペースト編集が主流になってから撮影されたメタリカのスタジオ録音風景では、「メンバー一人一人の演奏の、一番良いところだけを抽出して組み立て直したものなんだから、より本物の俺たちを表現することが出来る」てなことを言うわけ。で、どうしてこの種のロマンティックなイデオロギーがなくならないのかについて、アーティスト自身が求めているということや、音楽産業の構造的な問題(著作権の収益フローなど)のほか、ファンがそういうものを期待することによって、共犯的に成立しているという議論。結局なんで僕らリスナーはそこまでロマンティックな作者を求めるのか、という問題提起でしめるという、プレゼントしても格好いいものでした。3つ目はブラジルのマルタ(Martha Tupinambá de Ulhôa)。録音技術がなかった19世紀にブラジルで大流行し、ヨーロッパにも影響を与えた大衆音楽ルンドゥについて(サンバの原型ともいわれる)、どのように研究することが出来るかという方法論を紹介した。ルンドゥというのは元々はアフリカ起源のダンスで、奴隷貿易によってブラジルにもたらされたものだが、現在から対象に接近しようとすると、技術や時間だけでなく、宗主国の白人が残した楽譜や歌集、旅行記、現地劇場の公演記録など、さまざまな資料によって幾重にも媒介されており、歴史的想像力を駆使して慎重に分析をしないと、実際にどのような状況でどのように演奏され、どのように踊られたのかなどが見えてこないことが示された。

午後のセッションは不発続きでした。敢えて取り上げるとすれば、エジンバラ大のメリッサ・アヴディーフさんのiPod研究と今回日本勢唯一の発表者川本さんのカヴァーバーションのスタイル史研究。アヴディーフさんの研究は、小中学校の生徒がどのようにiPodを利用していて、それを通してどのような社会性(sociability)が生まれているかを、アンケート調査をもとに分析したもの。今回は中間発表ぽかったが、今後の発展が楽しみである。川本さんの発表は、50年代から00年代に至る代表的なカヴァー曲を並べ、それぞれについてオリジナル曲との差異をスタイルとして分析したもの。例えば50年代ではオリジナルとカヴァーのリリース時期も拮抗しており、どちらかというと競争的な関係にあったのに対して、70年代以降になると時代の違う、古い作品を参照するようなカヴァー曲が成立してくるようになる(例えばクリームの「クロスロード」とか、EL&Pの「展覧会の絵」とか)。

晩はIPMのマリオンがキュレーターとしてリバプールの音の変遷を追った展覧会『Beat goes on』を見に行った。小川先生とお食事をして、いろいろありがたい業界話を頂いた。その後、展覧会会場で、慶応で米文学を教えていらっしゃる大和田さんにお会いした。これで日本勢は計5人ということに。大和田さんとは5年以上前に渋谷で一度お会いしたきりだったのですが、再会出来てうれしかったです。その後パブで大いに盛り上がる、という構図。

このネタでは最初の記事ですね.

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