2月
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文化とは如何に動くのだろうか
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子どもたちにせがまれ、生まれて初めてエッフェル塔に登ってみました。
60年代のカウンターカルチャーとともに生まれた数々の思想や運動のうち、80年代の反動を経て今に生き残ったのはエコロジーとフェミニスムくらいのものだ、と良く言われるが、10年代はこの生き残ったカウンターカルチャーの共食いで始まりそう、という話。たまたまフランスのラジオの朝の討論番組(朝から討論するのである)で話題になっていて興味を持ったのだが、その番組のなかで紹介されていた「ELLE」というわりと通俗的な女性誌の最新号(2月12日号)の表紙には、「Les écolos, ennemies des femmes(エコロジストは女性の敵?)」という文字が踊る。フランスでは意識的に日本のポップカルチャーの伝播(?)に携わるいろんな人にインタビューを試みたのだが、その話は次回に譲るとして、今日はちょっとその辺の話を紹介したい。
日本でもそういう傾向は日増しに強くなっているけれども、(特に急進的な)エコロジストは盲目的な自然回帰志向(信仰?)に陥りやすい。どう考えてもノアの方舟的な選民思想にしか思えないんだけど。つまり、エコな生活をしていれば、自分だけは助かる、あるいはもっと世話好きなタイプであれば、あなたもエコな生活をしなさいと周りに進めたり押し付けたりでわりと鬱陶しい。本来は環境問題と自然志向というのは全く別のもの(実際風力タービンや燃料電池という環境技術は自然とはかけ離れたものだし、そもそも自然志向な人のイメージしている「自然」は、北極の白夜や砂漠の熱波というような実際の自然とは全く別の、言ってみれば「文化的な自然」に過ぎない)なのだが、それがくっつくことでいろいろ弊害が出てくる。ジェンダー的な問題もその一つ。つまり「技術」は男性側にあり、「自然」は女性の側にある。理系には男子が多く、文系には女子が多い。私は違う、と思うかもしれないが、これは統計上明らかな傾向である。
日本で、『ku:nel』とか『リンネル』とか『天然生活』とか見てると、オーガニック素材の洋服に身を包んだ女性あるいは母子の写真が良く出てくるが、こういうのはやはり母親と子どもたちの世界(あるいはそういうのに理解のある「草食男子」)の世界なわけだ。とはいえ働く女性よりも良き妻・賢き母であることに重きを置き続けてきた日本という社会では、「産まない」ことを通した女性たちの(儚い)異議申し立てが行われているのであり(2008年の日本の 合計特殊出生率 は1.37)、あまりこうした自然志向とフェミニスムの問題が交錯する局面は可視的ではないかもしれない。しかしフェミニストの主張が(ある程度)認められ、働く母親の権利が認められているフランス社会では、女性たちは平気で子どもを産み、働きながら育てる(フランスの合計特殊出生率は1.98と高い)。こうしたことを可能にしているのは、産休や育休などを法的に保障することや、家事や育児のアウトソーシング(要するに家政婦や保育施設)の整備のほか、科学技術による女性性の代替が欠かせない。つまり、機械や化合物(要するに洗濯機や食洗機や掃除機や粉ミルクや使い捨て紙おむつなど)によって、家事や育児の負担を軽減したり、男性と分担したり出来るようになったのである(現代の科学技術では、残念ながら男性が子どもを産むことはまだ出来ないが)。 ダナ・ハラウェイ 他の『サイボーグ・フェミニズム』 を引くまでもなく、女性の社会進出と性差均衡には、科学技術の介在が不可欠なのである。
翻ってエコロジストたちの謳う自然志向は、女性たちが獲得したこうした権利を、「不自然」なものとして一蹴してしまう可能性がある。洗濯機や食洗機や掃除機を使うことはエネルギーの無駄遣いであり、無用な温室効果ガスの排出につながる。使い捨て紙おむつは森林破壊の原因として槍玉に挙げられ、昔ながらの布おむつの利用が奨励される。粉ミルクは子どもの栄養バランスを崩すものとして、フランスでは富裕層向けの民間クリニックだけではなく、公立病院の産科でさえ母乳育児を無意味に称揚し、粉ミルクで育てようとする母親にいらぬ罪悪感を植えつけるようになっている。地球環境の変化は超越的な、逆らい難いものであり、人間は皆その運命に従わなければならない。だから女は家庭に戻れってこと。そして、家庭に戻ってしまうフランス人女性は増えているらしい。つまり、男たちにとって、環境問題は男性支配を回復するための格好の道具になっているというわけ。だって、女性の方から積極的に良妻賢母的な旧来の社会的役割に回収されてゆくのだから。
『ELLE』誌の記事の内容は大筋こんなもの。もちろん『ELLE』のような大衆雑誌が自らの商業主義を超えたところでフェミニスム運動に加担することはないのだけど、たとえご都合主義なものであっても世論喚起につながれば面白い。この号自体、誌上には自然派化粧品やオーガニック食品の広告は載っているわけで。ちなみに『ELLE』誌の記事は、エリザベート・バダンテールという女性哲学者とのインタビューで構成されたもので(正味2ページのみ)、バダンテールの新著『Le Conflit. La Femme et la Mère(葛藤:女であることと母親であること)』をテーマにしたもの。環境問題を人間には回避出来ない絶対的な真理として崇め、その一方で旧来の差別や格差をしょうがないものとして容認し、下手をすると国家的なプロジェクトとしてこれを押し付けて、それに従わないものを「異端」として抑圧するようなことがあってよいのだろうか?
興味のある人は是非読んでみてもらいたい。
どこかの大学みたいに、人文学部が環境とか言い出すといろいろ無責任な話になってくるような気がするんだけど(以下略)。
このネタでは最初の記事ですね.
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